「魚殖」とは、「魚職」から派生した「育てる漁業」について考えます。
つまり、養殖業の生産や流通に関することを学びます。

海に浮かぶ生け簀

自動給餌機

幼魚の生け簀

鯛が泳ぐ

ペレット状の餌

日光を遮断

 現在の鯛の流通を支えているのが、養殖ものです。スーパーや魚屋さんで売られている鯛の刺身のほとんどが養殖もので、今や養殖を抜きにして鯛の市場は成り立たなくなっています。

 鯛の養殖方法は、波の少ない地域に筏を組み、その下を網で囲って池をつくり、稚魚を放して飼育します。養殖ものの鯛は、浅いところで飼われているため、体色がどうしても黒くなります。それを解消するため、生け簀の上に黒いシートで覆いをかけたり、赤みを出すエビを餌に配合するなどの工夫を施します。また、鯛が十分に運動できる飼育密度にするなど、鯛がストレスを感じないように飼育されています。
 かつての飼育では、身が柔らかい、臭みがある、脂がつきすぎているなどが問題となりましたが、現在は配合飼料や筏の大きさを改良することで、天然鯛に遜色ないものが出荷されています。料理人のなかには「天然ものも養殖ものも変わらなくなってきた。脂のつき方など、かえって養殖ものの方が美味しいと感じる人が増えてきた」という人もいます。調理するときに水でよく洗って脂分を落とし、水気を拭き取れば、鯛のおいしさが最大限に引き出せます。

 養殖鯛の最大の魅力は、安全に安心できる環境で管理されていること。海洋汚染を受けやすい天然ものよりも安心となのです。加えて、サイズが均一であること、量が安定していること、一年中おいしい鯛を味わえることも人気の要因となっています。

出荷準備の鯛

網で出荷場へ

鯛の選別

ケースで出荷

 卵から育てる「育苗生産」と購入した稚魚を育てる「稚魚生産」があります。「育苗生産」は陸上の生産水槽で飼育されますが、体長50〜70mmに成長すると、陸上から海面の生け簀に移されます。自然の海水のなか、栄養を考えたペレット状の飼料を食べて鯛は大きく育っていくのです。
 出荷は、鯛が1kgに達する頃からはじまります。活魚で出荷する場合は、輸送中のスレ傷を防止するため、特殊な輸送用ケースに入れられ、卸業者や販売店のもとに届きます。

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